西川火尖(にしかわ・かせん)
一九八四年京都市生まれ。「炎環」同人。石寒太に師事。
花時の水をくぐらす茹卵
花散らしゆく胎教の合唱団
端折りつつ話してみても蝶狂ふ
まだ朝の蟻を摘んでをりたるに
ぐしぐしと汗拭きをれば呼ばれたり
子の問に何度も虹と答へけり
昼寝せむ丈夫な川を思ひつつ
螢袋つひに誰にも祈らせず
鶏頭花すぐに答が出て迷ふ
スパゲッティメジャー必ず小鳥来る
凶年や高い高いと児をあやし
月光に骨の掠れるまで棲まふ
冬近し無料情報誌の黄色
綿虫はイヤホンの音漏れが好き
ボロ市や髪を離れぬ静電気
繰り返し繰り返し冬の川渡る
すずなすずしろお目当ては男の子
枯園の四隅投光器が定む
暖房車不可避の朝を走りけり
*
編者コメント
火尖さんは同い年である。
同じ時期に京都の大学に通っていたのに、残念ながら関西では知り合う機会がなかった。
blog「そして俳句の振れ幅」を知って、文章や、時折公開されるマンガ(これが超絶に下手なのだが、たいへんおもしろいので一読をおすすめする)を楽しみにしていた。
blogにぽつぽつと掲載される句や批評が私とはまったく違う観点で、同い年と言う事もあり、いつも気になる存在であった。
しばらく就職、結婚、育児と私生活に追われ俳句から遠ざかった時期もあったようだが、最近では実にのびのびと俳句活動を展開している。ちなみに「次の元号で最も重要な俳人」とは、次のTweetを典拠としている。
実生活に軸足を置く火尖さんの作風は、言葉の世界に遊ぶ私とはまったく違う。そして、句も批評も、疑いなく力がある。
数年前「Kuru-Cole」1を編んだときに、どうしても加わって欲しくて連絡をとり、それ以来、主にネットを通じて交流している。実際に会ったのはまだ数回しかない。いつか句会や勉強会で思う存分その違いについて話し合いたいと思っているが、残念ながらまだその機会を得ていない。火尖さん、いつか、よろしくお願いします。
さて火尖さんの小論は、私が最も尊敬する書き手の一人である外山一機氏に依頼した。掲載は日曜日になる。お楽しみに。
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