引き続き、「俳句の未来予想図」にこだわっていきたい。
だから、昭和三十年代の人の俳句を読んだとき、すごく明るいなという感じがあります(笑)神野紗希氏「俳句」P.79
高山れおな氏は小川軽舟氏『現代俳句の海図』に取り上げられた、「昭和三十年代俳人」たちを概括し、俳句に「表現すべき主題」が失われた時代に「一種の俳句原形主義というか、俳句純粋主義」に拠った俳人とし、日本経済が一番景気の良い時代の余裕を背景にしており、現代が直面する「苦しみ」「暗さ」がないことを指摘する。
そこに、冒頭の神野氏の発言が入る。
神野氏は決して、「明るさ」自体を否定的に捉えているわけではないようだが、「新興俳句、社会性俳句に興味がある」とも発言している。
社会性俳句批判もひと段落して、もう一度この世代を見直そうということだろうか。
ただ、このあたりの問題意識は、ほとんど高山氏と神野氏、若手ふたりの応酬だけで成り立っているような感じ。橋本氏、対馬氏らにとって、社会性俳句を担った大正世代は研究対象、再評価の対象というよりも直に接した記憶のほうが深いのだろう。年齢が近いということもあるだろうが、現代俳句の遺産を積極的に見直していこう、という姿勢に、私も共感している。
高山氏は、「昭和三十年代俳人」と銘打ちながら、昭和三十年生まれの夏石番矢氏が入っていないことをかねてより問題視しており、ここでも控えめながら指摘している。
もちろん、神野氏が言うとおり「どの時代のどのムーブメントもその世代をすべて網羅しているわけではなくて、これまでの歴史の中で新しいと思われる点を、それぞれの人がチョイスして、ピックアップしてみせている」のであるから、小川氏が夏石氏を戦略的に切り捨てたとしても、それは小川氏の立場であり、問題はない。
また、そのピックアップに反発する立場があっても、それはそれで俳壇にひさしぶりに対立軸が現れるかもしれなくて、外野としては面白い。
…いま、不用意につかったが「外野」という立場。
俳壇で「公共」がなくなったこと、俳壇全体を巻き込んだ対立軸がなくなったこと。それはつまり、「外野」が増えた、ということでもある。「外野」は、自分に関わることにしか興味がない。
自分にかかわること。つまり、僕の場合でいえば、 今、「昭和三十年代俳人」が何をしてきたか、ではなく、これから僕たちがどんな俳句を作っていけるか、ということのほうに、興味がある。
ところで、まさに世代としても、経歴としても「昭和三十年代俳人」に「入っても良い」はずの対馬康子氏の次のような発言。
こういう世の中になって、ますます混沌としてきた。(略)文芸はそもそも個人の存在みたいなところをみつめるところで存在してると思うのです。だから逆に言えば、この社会がある限り、私たちは俳句を詠める。これは、小川軽舟氏の「俳句はどこへ行くのか。とりあえずどこにも行かない」発言に、どこか通じている気がする。
話は突然飛ぶが、先日、ちょっとショックなニュースを教えて貰った。雑誌『国文学 解釈と教材研究』(学燈社)廃刊のニュースである。
→読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20090518bk17.htm
国文学総合誌としては斯界の二大看板のひとつ。
名もなきペーペーの身では直接影響はあまりないけれど、国文学を学ぶ人間としては、見通しが暗くなる。
大学図書館で立ち読みして、面白そうな記事があるときだけ買う、不実な購買者である僕としてはあまり大きなことは言えないのだけど、それにしても確実に「冬の時代」の寒さを増している実感がある。
だから、たとえば、中古文学会創設四十周年記念講演で、東京大学名誉教授の秋山虔氏がつぎのような言葉でご講演を締めくくった、のを見ると何とも言えない気持ちになる。
さて、いつぞや新聞の文芸時評のなかで、フランスの若い批評家の言である由ですが、「文学が危機に瀕しているといわれるが、文学の重要性を理解できない社会のほうこそ危機に瀕している」という文言が紹介されていました。私たちはいま厳冬の寒風にさらさらていますが、胸を張って堪え、突き抜けることによってやがては春の季節を引き寄せることができるのだという思いでございます。
秋山虔「中古文学研究の今昔」『中古文学』七九号(2007年6月)
船団が主催するシンポジウム「百年後の俳句」に、「百年後も生きているだろうか、俳句は。」という惹句がついているのは、決して大げさではないような気が、している。
俳句は、…文学は、もっと、生き残るために騒ぎ立ててもいい頃じゃないか?
*後記。
・)「e船団」の日刊一句で拙句と当blogとをご紹介いただいたみたいです。ありがとうございます。
「e船団」から来てくださった方、こんにちは。読みにくいですが、お暇なときに眺めてやってください。
・)参考資料を集めようとネットを徘徊していたら、旧友の古いblogに自分が書き込んでいるのを発見。同じようなところをぐるぐるしてるなー、となんともいえない気分になる。
・)東京連中は相変わらず定期的に集まって活動しているようだ。振り返ってみると関西の同世代にもしばらく会ってない。みんなで俳句の話がしたい。
・)…なんか、暗い。文脈の流れで暗くなってしまいました。「未来予想図」なのに。いかんいかん。
「e船団」から来てくださった方、こんにちは。読みにくいですが、お暇なときに眺めてやってください。
・)参考資料を集めようとネットを徘徊していたら、旧友の古いblogに自分が書き込んでいるのを発見。同じようなところをぐるぐるしてるなー、となんともいえない気分になる。
・)東京連中は相変わらず定期的に集まって活動しているようだ。振り返ってみると関西の同世代にもしばらく会ってない。みんなで俳句の話がしたい。
・)…なんか、暗い。文脈の流れで暗くなってしまいました。「未来予想図」なのに。いかんいかん。
次回、もう少し明るく展望できるようにします。
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