2013年8月31日土曜日

告知

第16回俳句甲子園、終わりましたねー。

俳句甲子園結果速報 が出ております。

さすが第16回ともなると、常連校にも蓄積が出てくるし、初出場も並大抵ではない学校が多いので大会前から注目校の情報が飛び交っていました。
残念ながらわが母校は地方敗退で松山に行けませんでしたが、そのぶん洛南は活躍してくれたようだし、個人賞でも知った名前がちらほら。
最優秀の青本柚紀さん(広島県立広島高等学校)は俳句Gatheringの句相撲でも優勝した「広島の双子」。噂を聞きながら、私はひそかに「双子無双」と呼んでますが(^^;、いま一番の注目株ですね。

  夕焼や千年後には鳥の国  広島県立広島高等学校 青本柚紀


そのほかGatheringなどで見知った名前もちらほら。にやにやしながら、注目句などあげてみます。


  夕焼やいつか母校となる校舎  大阪府立吹田東高等学校 大池莉奈

  はちすから鳥が生まれてきたやうな  開成高等学校B 日下部太亮
  バカとだけ手紙に書いて雲の峰  熊本信愛女学院高等学校 皆越笑夢
  裏庭の団栗の木と同い年  沖縄県立首里高等学校 田島志保理

とはいえこれらは入賞句。入賞してない句も、もう一度「甲子園」とは別の視点から評価する機会があるといいなぁと思います。

追記。 まったく俳句とは関係ないですが、さすがこの世代になると名前のバラエティがすごいですねぇ。。。「~子」のつく名前も「優祈子」「 緋奈子」とひとひねり。こうなると昔からある名前のほうがかえって目立つかも。。



と、いうことで、暑い夏が終わり、触発されて俳句したい若手の皆さんへ。
俳句ラボ、9月からは私が担当です(笑)。



若手による若手のための俳句講座「俳句ラボ」

関西在住の若手俳人 塩見恵介、中谷仁美、杉田菜穂、久留島元の各講師が、俳句の作り方や鑑賞の方法などについてわかりやすく、楽しく教授。
魅惑的な俳句の世界へエスコートいたします。句作経験が無くても大丈夫。実作を中心に実践的な句会を体験していただく、ユニークな内容を予定しております。

対象:45歳以下で俳句に興味がある方ならどなたでも。
内容:各月の最終日曜日、2時から5時
基本を学ぶ(6・7・8月 講師:杉田菜穂)
どんどん作って上達(9・10・11月 講師:久留島元)
楽しいイベントと句会(12・1・2月 講師:塩見恵介・中谷仁美)
※3月には、全講師参加による総括句会を予定しております。
※受講者は、講座終了時に作成する作品集(講師、受講者の作品などを掲載予定)に作品をご掲載いただけます。
受講料:
  1、2、3すべて受講:5000円
  1、2、3いずれかを受講:1期につき2000円
問い合わせ・申し込み:

  電話(072−782−0244)で公益財団法人柿衞文庫まで


よろしくお願いします-。



2013年8月23日金曜日

ハイクの日、句イズラリー

8月19日はハイクの日!


ということで、園田学園女子大学で行われた八一九の会イベント「句イズ グランプリー」に参加して参りました。

八一九の会は、園田学園女子大学に坪内稔典先生が勤務していた関係から、大学職員や関係者を中心に発足した句会。一時は活動休止していたそうだが、ここ数年は参加者も増え、毎月一回、学内の食堂で食事(とお酒)を囲みながらの句会が盛り上がっている。

中心になっているのは「船団」会員でもある岡清秀さん。
坪内先生はいちおう「師範」と位置づけられているが、会自体は「船団」創刊以前からあるらしい。そのためメンバーも「船団」に限らず、はじめて数年、八一九の会にしか参加していない人も多い。
句歴にも年齢にも関係なく集まっている、活発でおもしろい句会なのだ。

私は例によってサボってばかりなのだが、今回「句イズ グランプラリー」ということで、どんなものかまったくわからないなりに参加してみた。


当日の参加者は18名。

「船団」重鎮の内田美紗さんや「銀化」の小池康生さんといった八一九の会の顔役な方々から、当日浴衣割引を狙って浴衣で参集した「ふらここ」メンバーまで、句歴、結社、年齢もバラバラ。わたなべじゅんこさん、早瀬淳一さんらおなじみの顔ぶれも。

まず参加者は5、6人ずつの3チーム「芭蕉」「一茶」「子規」に振り分けられる。仲間同士で組まないよう配分され、ほぼお互いが初対面というチーム編成も。

そしてここからがゲーム開始。スライドに映写された5×5のマス目は1050の点数が記され、「時候」「天文」「動植物」「生活」「一般」などのジャンルに分かれている。バラエティなどでよく見るクイズパネルの形式だ。
ジャンルと点数を指定するとパネルがひらき、そこに出た題で3チームの代表がそれぞれ一句を詠む。時間は10点が1分、50点でも2分半だから結構きつい。
句が出そろったら、あとは句相撲形式で3句の人気を競う。優勝句が点数総取りで、選手交代。優勝チームは次のパネルも指定できる仕組み。
判定は参加者の多数決で決まる。チームとしては仲間に作りやすいお題を引いて、仲間の句を見抜いて票を入れたいのだが、見込みが外れたり、ほかの句の良さに惹かれたり、なかなか思いどおりにはいかない。
もちろんパネルには「得点2倍チャンス!」とか「点数は得票数の倍数!」といった仕掛けもある。他にも「写真で一句」や「オノマトペで一句」のようなひねったお題もあり、パネルをひらくたびに嬌声や悲鳴があがる。

何枚かの花の写真だけ見せられて「どれかで一句」の問題は、正直まったくわかってませんでした。自分の番でなくて良かった・・・。(ススキとキキョウはわかったよ!)

ちなみに私は少し遅刻してしまったのだが、内田さん率いる「一茶」チームに入り、5番手を拝命。チームメイトは八一九の会の井藤さん、「円虹」の新家月子さん、「ふらここ」でおなじみの仮屋賢一くんと、信州大学の吉村くん。新家さん、よっさん(吉村くん)とはこの日初対面。

挨拶もそこそこにビールがまわり、乾杯。
ゲームが始まる前に腹ごしらえ、とばかりにがつがつ食い、ゲーム中は勝敗に一喜一憂しながらビールを交わし、たちまち自分の番がくる。1分は短いかと思ったが、その場になると案外作れるから妙なものだ。
残念ながら私は点をとれず、一巡目はエース・仮屋だけが30点を獲得。ほかのチームに水をあけられたが、2巡目では仮屋、井藤と点を獲得。休憩をはさんで再開された久留島の対戦相手は金成愛、中山奈々という顔ぶれ。
この回は荒れに荒れ、金成さんの句(作者がわかりやすい句をつくってチームメイトにアピール)にブーイングが殺到。30点を3人等分のかたちで決着。祝杯に「いいちこ」ロックで一杯・・・。

午後の六時から開始されて、食事や持ち込みのお酒を楽しみながらの3時間半。
結果はわたなべさん、金成さんらチーム「子規」が優勝。賞金として、「盛大な」拍手が送られた(笑)。

試合後半は差し入れの「デンキブラン」や「いいちこ」がいい具合にまわり、参加者一同大いに盛り上がった。初対面とは思えぬほどチーム内は結束していたし、やはり俳句は「勝ち負け」を楽しむゲーム要素と相性が抜群にいいらしい。


というわけで、八一九の日、ひさびさに俳句で思い切り遊ぶことができました。


それもこれも、すべて岡さんの実力なのである。
企画・発想してパワーポイントでパネルを作成、食事の差配からチーム編成、当日の司会進行にいたるまで、お一人でこなされている。

八一九の会、という場の空気もさることながら、こういう真剣な遊び方の達人がいるから、船団の俳句はおもしろいのだ。

岡さん、改めて、お疲れさまです、ありがとうございます。


2013年8月11日日曜日

惰性ではないか


私が俳句を始めたのは第4回俳句甲子園に出場することが決まった2001年の4月ごろ。

それから今日まで、多少のブランクを挟みながらも一応「俳句を続けている」。
つまり「俳句の実作を続けている」ということである。

ところが、実はこの数ヶ月、ほとんど実作をしていない。
句会にも顔を出せていないし、結社誌への投句も出したり出さなかったり。実際ばたばたしているし、タイミングが悪かったり単純に忘れていたり、いろいろだが、どうも意気が上がらない。
これではとても「俳句を続けている」と名乗ることはできない。

ところが一方、ネットに接続すればほぼ毎日spicaの更新をチェックし、e船団の記事を拾い読み。毎週日曜に「週刊俳句」、金曜日には「川柳時評」「俳句空間」。

最近はじめた「俳句Gathering」のTwitterで短詩型関係者の動向を知ることも多い。

麒麟さんから「変な句集買ったよ」とメールをもらうこともあるし、

書店に行けば俳句総合誌を一通り立ち読みする癖は相変わらず。

句会には行けていないのに、俳句仲間に会う機会は、案外なくなっていない。


これは、惰性ではないか。


そう思うこともある。

ネット記事だって、内容に関心があるのは事実で、刺激を受けたりおもしろがったりしているが、実態はほとんど習慣である。
あるいは総合誌で、ついつい知り合いの名前を探して読んでいるのは、単なる友情であり人懐かしさであって、俳句表現への純粋な興味では、ないのではないか。

思うに私が俳句を続けているのは、俳句を続けられる環境があり、すぐれた作家たちに巡り会い句座を共にできた、いわば偶然の結果であって、俳句表現への飽くなき欲求など、私にはないのではないか。

いったい、私が俳句に求めているのは、何なのだろう。呑み友だちが欲しいなら、別の出会いもあるはずだ。



ところが、ある瞬間にはそんな煩悶は氷解する。

たとえば角川「俳句」をひらいたとき。

 夏の雲ファラオの壁画みな働き  西山ゆりこ
 毎日が快晴目高覗き込む

なんだ、この健康優良ぶりは。と、思わず笑ってしまう。
直接知り合いではないが、この人の堂々とした詠みぶりは好みのタイプ。

 純喫茶「丘」のまはりの春の光  佐藤文香

お、次はこう来たか、と。
知っている中でも、次の一手が読めない、常に実験中の作家は面白い。同時代を生きているから楽しめる楽しみ方。



たとえば「川柳カード」をひらいたとき。

 ちりがみに包んでおいた「死んでるみたい」  榊陽子
 どうすれば壁を独占できますか  小池正博
 にんげんの酸味が残る銀の匙  くんじろう
 手をあげて紙コップから飛び出した  湊圭史
 馬車馬が初めて馬車を見た日の午後  兵藤全郎

うーん、変な句ばっかり。
何が面白いかとは言いにくいが、ある意味でストレートな、作者自身が日常から切り取ってきた「奇妙さ」「不気味さ」がナマに出ている感触が『川柳カード』のおもしろさ。

その一方で

 春の雨読むはずの本ことりとす  広瀬ちえみ
 万緑をくぐる全身ゆるくして

なんて、季語もあるし、どこが川柳なのか、俳句として注目してしまう。
万緑の力強さに対して「ゆるくして」と言えるのは、さりげないようでかなり新鮮ではないか。


そう、私は、今、この時、この一句に出会う、この一句に驚く、この一句を楽しむ。
そのために俳句を続けているのだ。