2016年11月4日金曜日

Kuru-Cole 6 寒天


Kuru-Coleとは?




寒 天(かんてん)

 一九九二年大阪生まれ。「ふらここ」所属


春水にほどかれてゐる躰なり
行く春の髪結ふ指にある火傷
五月病からだの一割が性器
手鞠花で殴れば振り向いてくれた
大人の気配感じて水鉄砲やめる
夏蝶の跡べつたりとある車窓
製氷の音今誰か見たやうな
潮焼けの背に背負はるる眠りかな
古床の甘いにほひの夏の果
朝露やみだらな鳥の赤い腹
誰も笑わず月を運んでゐるをどり
秋風の部屋に鋭利なペンダント
白露を抱いてゐる母を抱いてゐる
秋蝶の影つややかな手水鉢
月光を泳ぐあなたを殺したい
寒そうなゾンビが駅で待つてゐる
ジャンパーの背に雨暗く染みてをり
ふくろふの首に拳を沈めけり
着膨れてせんせいとよく目が合ひぬ
愛のある酒はうつくしおでん食う


編者コメント

彼女とはじめに知り合ったのはいつだったか、よく覚えていない。
俳句甲子園の関係で、同じ関西のつながりで学校ぐるみの交流があったから、おそらくその一環だろう。一時は船団の宝塚句会にもよく顔を出していたし、そのころから独特の言語センスで注目されていた。当時は「緑の髪の子」で有名であった。
何を聞いてもにやにやあいまいに笑っている彼女は、あまり人と親しむというふうでもなく、いつの間にか姿を見せなくなった。俳句からも一時は距離を置いていたようだ。

数年経って再会した彼女は、緑色だった髪を黒髪にし「永遠の中学二年生」を自称していた(14歳だったかもしれない。どっちでもいい)。そのくせ酒も飲むし、言動はまったく中学生ではなかったが、なんとなく肩肘張ったところがなくなり、つきあいやすくなった印象だった。
現在の彼女は、どうなのだろう。今回20句をみて、そのバラエティの広さに一驚した。関西俳句会ふらここに属し、気ままに句会を楽しんでいるようだが、高校時代から数えると句歴は長いし、自由度の高いぶん、素材にあわせた技巧の高さがうかがえる。

俳句界は、ともすれば結社に属していなければ不真面目だと決めつけたり、季語や俳句史の勉強を強制したり、若者に対してむやみにプレッシャーをかける傾向がある。もちろん期待の裏返しなのだが、気ままな彼女のスタイルは、俳句にとって「勉強」だけが重要ではないと思い出させてくれる。中高年が自由に俳句を楽しんでいいように、若者もまた、もっと自由に俳句を楽しんでよいのだ。

小論は、彼女の直接の先輩である中山奈々氏にお願いした。近しい間柄ならではの愛のある好論である。お楽しみに。


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