2016年9月30日金曜日

Kuru-Cole 3 吉田竜宇


ひさびさのKuru-Cole更新です。


Kuru-Cole とは?

吉田竜宇(よしだ・りゅう)

一九八七年滋賀県生まれ。「翔臨」所属、竹中宏に師事。

花菜雪臨書の逸れて指を嘗む

背凭れに齒形の沈む梅見かな

骰子振りて加賀の春夜にこぼれたり

生涯分子宮に卵八重櫻

田螺なほ互ひ嘗めたり田螺和

きるじやぷと爆彈に文字茄子の花

京都驛高階鰻婚家に幸

水羊羹脚のあひだに目があつて

向日葵は乳房のはざまにも重たし

茄子の紺握るや現實以外闇

溺死たとへば最後に腐る胃の獅子唐

花火祭木桶に浮かぶ赤子かな

東方を征せよ梨が下手に剥け

黑帶の無言で混じる木賊刈り

死後も讀書するなり花梨がこはれてゐるけど

酒粕に鱈は一夜を古びたり

天使ら船を沈め出汁沸く湯に滑子

冬帽あまた枝に掛け人體模型に掛け

よく保つや乳は乳房を經て凍る

地は嫌と寒鮒死せるまで謂はず



編者コメント

吉田竜宇さんは、竹中宏さんのお弟子さんである。
今はまだ俳句よりも歌人としてのキャリアが有名で、学生時代は京大短歌に所属し、2010年に第53回短歌研究新人賞を受賞している。だから短歌界に造詣が深く、今の若手作家や短歌の現状に鋭い批評眼を持っている。
しかし、私が知っているのは俳句作家としての吉田竜宇さんである。青木亮人さんを通じて竹中宏「翔臨」に所属、驚くほど短期間に研鑽を積んでいる。
彼の属する「翔臨」は、私の属する「船団」とはずいぶんカラーが違う。いや、それどころか竜宇さんのような句作りをしている作家は、同世代のなかでは管見の限り唯一無二である。いわば、今の俳句の流れからはまったく異端なところから発生してきた作家なのだ。正直なところ私の手には余るのだけど、抜群に気になる存在なのだ。

ということで、竜宇さんの小論は、竜宇さんと縁の深い青木亮人さんにお引き受けいただいた。青木さんは周知のとおり、愛媛大学准教授、近代文学研究者で俳句評論のホープである。ご期待いただきたい。

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