2012年11月25日日曜日

「洛外沸騰」 アンケート(抄)


先日の現代俳句協会青年部シンポジウム「洛外沸騰」で配布された資料のうち、パネリストへの事前アンケートの結果が面白かったので、メモ代わりに、いくつか引用してみます。
なお、回答者は、青木亮人、岡田由季、松本てふこ、彌榮浩樹、の4人。
司会の三木さんは、回答したそうですが資料には掲載しなかったそうです。

Q4.好きな俳人ベスト3をあげてください。
青木 1位…与謝蕪村  2位…中村草田男・山口誓子 3位…宇佐美魚目
岡田 1位…星野立子  2位…川崎展宏       3位…寺沢一雄
松本 1位…波多野爽波 2位…辻桃子        3位…杉田久女
彌榮 1位…飯田蛇笏  2位…波多野爽波      3位…橋カン石

Q5.最近特に注目している俳人は誰ですか。
青木 現在、戦時下の中村草田男と山口誓子を調べているため、この二人に関心があります。彼らはとにかくヘンです。
岡田 西村麒麟。
松本 片山由美子。御中虫。音羽紅子。
彌榮 飯田蛇笏

Q9.俳句でしか伝えられないことがあると思いますか。はいの場合、それは何ですか。いいえ、どちらともいえない場合、それはなぜですか。
青木 はい。 他ジャンルに存在しない「何か」としかいえないもの。
岡田 どちらともいえない。 俳句でしか伝えられないというとずいぶん気負った感じがしますが、俳句で表現するのに向いていることがらというのはあると思います。
松本 はい。 やるせなさ、バカバカしさ、それゆえの希望。
彌榮 はい。 俳句作品という形でしか把握できない、<世界>の「俳」的な厚み・屈折・手ざわり・重たさ。

さて、次の人々に向けてあなたなら具体的にどんな句を伝えますか。 
Q10.日本のことを知らない外国人に
青木 夏草や兵どもが夢の跡  芭蕉
岡田 たてよこに冨士伸びてゐる夏野かな  桂信子
松本 山又山山桜又山桜  阿波野青畝
彌榮(日本語はわかり、感じることができる、という前提です。ありえない前提ですが) 
 をりとりてはらりとおもきすすきかな  飯田蛇笏
 階段が無くて海鼠の日暮かな

Q11.俳句を知らない小学6年生の子どもに
青木 露の玉蟻たぢたぢとあんりにけり  川端茅舎
岡田 冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ  川崎展宏
松本 夕涼みばばあは誰もうるさくて  如月真菜
 じゃんけんで負けて螢に生まれたの  池田澄子
彌榮 春の水とは濡れてゐるみづのこと  長谷川櫂
 手をつけて海のつめたき桜かな  岸本尚毅
 さびさびとステテコくはへ昼狐  加藤郁乎

Q12.俳句に興味が無い若者世代に 例えば大島優子(AKB)に
青木 じゃんけんに負けて蛍に生まれたの   池田澄子
岡田 頭の中で白い夏野となっている     高屋窓秋
松本 ふはふはのふくろふの子のふかれをり  小澤實
 初夢のなかをどんなに走つたやら  飯島晴子
彌栄 ※相手に合わせて選びます
 ひるがほに電流かよひゐはせぬか  三橋鷹女
 うたたねの泪大事に茄子の花  飯島晴子
 天体やゆふべ毛深きももすもも  折笠美秋

Q14.俳句に興味がないあなたの同世代に
*例えば、小説は読むが俳句には見向きもしない友人に
青木 手品師の指いきいきと地下の街  西東三鬼
岡田 冬キャベツとんかつに添ひ輝ける  寺沢一雄
松本 千人針はづして母よ湯が熱き  片山桃史
彌榮 銀河系のとある酒場のヒヤシンス  橋 閒石
 恥づかしきものげんげ田に捨ててあり  波多野爽波
 吐瀉のたび身内をミカドアゲハ過ぐ  佐藤鬼房

Q17.恋をしている人に
青木 分け入っても分け入っても青い山  種田山頭火
岡田 下萌えぬ人間それに従ひぬ  星野立子
松本 雪まみれにもなる笑つてくれるなら  櫂未知子
 君のことなんにも知らず春の蟹  辻桃子
彌榮 寝不足や大根抜きし穴残り  鈴木六林男
 身二つとなりたる汗の美しき  野見山朱鳥
 空を出て死にたる鳥や薄氷  永田耕衣

Q19.絶望している人に
青木 鉛筆の遺書ならば忘れ易からむ  林田紀音夫
岡田 ひよこ売りについてゆきたいあたたかい  こしのゆみこ
松本 幸福だこんなに汗が出るなんて  雪我狂流
彌榮 西国の畦曼珠沙華曼珠沙華  森澄雄
 神田川祭の中をながれけり  久保田万太郎
 天の川わたるお多福豆一列  加藤楸邨



なるほど、という回答もあり、 「何故!?」という回答もあり。
お人柄などを知っているとさらに楽しめますね。

当日の講演会では、青木さんから、「句を選ぶことというのは、逆に何かを選ばないこと、つまり選ばなかった句に対するアンチとなる」といったお話がありました。
そこからすれば、「伝えたい俳句」(というより教えたい俳句、といった感じですが)としてパネリストが選んだそれぞれの句が、同時に、どのような句に対するアンチたりえているのか、といったあたりを考えるのも、興味深いと思います。


・・・個人的には、「注目している俳人」で、山口誓子・中村草田男、飯田蛇笏、片山由美子、という並びで、西村麒麟さんが入っているのにツボってたのですが(笑)。
岡田さん、やるなぁ。



※ 当日参加されていた、小池正博さんもアンケートの一部を紹介されています。
 週刊「川柳時評」:第23回現俳協青年部シンポジウム
 

0 件のコメント:

コメントを投稿