2020年2月19日水曜日

句集祭・始末


関西現代俳句協会では、毎年年末に、忘年会をかねた句集祭というイベントがある。
その年に出た協会員の著作(句集・評論集など)を合同で祝う、出版パーティのようなものである。
聞くところでは鈴木六林男あたりから始まったらしく、日ごろはあまり交流がなくても句集刊行を祝い、お互いにどのような句を詠むのかを知ろうという、関西ならではの交流の場である。結社や、都道府県を越えた連帯感を持っているのは、関西地区の伝統であり、他地域には見られない特色である。
活況だったころは、その年刊行された句集から引いた一句を特大の垂れ幕に揮毫して会場じゅう一面に飾ったりして、なかなか壮観だったそうである。
今ではそこまで人数もいないので、一句紹介と著者からのコメントを紹介する程度で、あとは会場テーブルに置かれた句集などを手にとりながら著者と歓談を交わす、まあ、忘年会が始まるまでの交流会といった雰囲気ではある。
そういえば先年亡くなった伊丹三樹彦氏は、毎年のように句集や、あの「写俳句集」を刊行しており、私が参加しはじめたころにはもうパーティには参加されていなかったが、毎年電報で忘年・句集祭への熱い祝辞を寄せていたことが印象的であった。

とはいえ、せっかく句集があるのに句集を「読む」ことをしないのはもったいないなと、ひそかに思っていた。時間の関係もあるのだろうが、一句紹介と著者コメントだけで、句集単位での鑑賞や読解のチャンスがないのである。
昨年はたまたま、船団の会員が2人句集を刊行し、また会場でも1冊別の句集をいただいたので、手元に、句集祭に出展された句集が3冊ある。
本当なら1冊ずつ鑑賞しようと考えていたのだが、なかなか書けないでいるうちに、年をまたぐどころか「今年度」も終わろうとしている。これではいけないのでせめて句集から目に付いた句をいくつか紹介し、句集祭の個人的な始末をつけておこうと思う。

ご恵贈いただいた著者の方に感謝します。

千坂奇妙氏、『第一句集 天真』(星湖舎)。
 瓢箪のくびれは神のくしやみから
 にやまにやまと筋金入りは黒海鼠
 夏痩せて女ちりめんじやこめつてい
 日向ぼこ靴下脱いでふと嗅いで
 象よりも寝釈迦大きくおはしけり
帯文は坪内稔典氏、序文は大島雄作氏。

藤井なお子氏、『ブロンズ兎』(ふらんす堂)
 仙人のまばたき京のアマリリス
 考へる人のかたちに似て桜
  ルオーWinter
 欲しいのは風と逆光かいつぶり
 空蝉のほかに良いものなどなくて
 落とし穴掘つて隠しておく晩夏
解説は坪内稔典氏。

浜脇不如帰氏、『句集はいくんろーる』(私家版)
 青森で泡盛醸すユビキタス
 妙案が浮かんじゃ沈む三尺寝
 龍(じゃ)踊りたい汝(な)が先けんね起きっとは
 どこまでが自分なのかな踵枯る
 春の山まぶた閉じられ忘れられ

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