2011年8月14日日曜日

麒麟さん生誕祭


西村麒麟さんがお誕生日だそうだ。


西村麒麟一人っきりの誕生日パーティー「きりんぽろぽろ」のページ


お誕生日おめでとうございます!
お盆真っ盛り、今宵は満月見ながら日本酒呑みましょう。

鬼太郎全巻をお送りするのは結構大変なので(こういう場合はやっぱりマガジン連載版ですかね。ちくま文庫で全七巻です)、取り急ぎ「空飛ぶ麒麟」について書かせていただきます。

といっても、いま手許にある資料だけなので、中国五千年の深奥にはとても及ばないのだが、ひとまず「麒麟」話をもってお祝いの言葉に代えることにする。


「平成狂句百鬼夜行」番外


麒麟。
空飛ぶ麒麟、というよりもいまやキリンビールのキリン、といったほうが通りがよい。 (そういえば麒麟が空を飛ぶという伝承も本来はない)
東洋における一角獣であるが、西洋のユニコーンが処女にしか懐かないといわれるのに対して(こちらは西洋騎士道の象徴である)、麒麟は儒教的倫理観を具現化した聖獣である。

後漢の許慎(58?~147?)『説文解字』「鹿」部に「麒麟は仁獣で、オオジカの体、牛の尾、角が一本ある」とある。鹿に近い生き物なのである。もともと「麟」の一字だけであらわしていたが、麒は牡、麟は牝だともいわれる。声は音階に従い、行動はコンパスや定規で描いたように美しく、歩くときも注意深く土を選び、群れをなさず、遠出もしない、という。清代の段玉裁(1735~1815)の注によれば、角が肉に包まれて人を傷つけず、生きている虫を踏まず、生きている草を折らない、とされるため「仁獣」というのだという。

古来、名君が仁政を行うと麒麟や鳳凰があらわれるとされ、歴史書にもしばしば麒麟出現の記事がある。逆に『春秋公羊伝』では孔子71歳のころ、麒麟の死体を発見して「吾が道、窮まれり」と悲嘆したと伝える。
またすぐれた才能をもつ人を麒麟がこの世に連れてくる、というコウノトリのような話もあり「麒麟送子」という。これで生まれる子がすなわち「麒麟児」であり、現在でも中国台湾には縁起物で麒麟送子の図案を用いているそうだ。

日本では出現の例が少ないが、『日本書紀』天武天皇九年(680)二月辛未条に、葛城山で見つかった鹿の角が、根元は二枝だが末は一つに合わさっていた、けだし麒麟の角であろう云々、という角だけが見つかった記録がある。

鳥取県の各地では「麒麟獅子」と呼ばれる、麒麟の獅子舞が舞うという祭がある。
慶安三年(1650)、徳川家康のひ孫であった鳥取藩主の池田光仲が、日光東照宮から分霊した因幡東照宮を建立して始めた祭だといわれる。猩々に先導された麒麟獅子が、子どもたちを祝福するもので、鳥取県では百箇所以上で麒麟獅子舞が現存しているそうだ。

この祭は2005年公開の映画『妖怪大戦争』(監督・三池崇史)でも重要な役割を果たし、主人公タダシ(演・神木隆之介)が麒麟に選ばれた「麒麟送子」となって世界を救うことになる。作中、キリンビールも大変重要な役割を果たす。
この映画、荒俣宏原作、京極夏彦ほかの製作で水木ファンとしてはかなりツボな作品だった。むしろ麒麟さんにはこちらのDVDをオススメしたいと思っている。



  麒麟児登場 満月の夜でした  久留島元


参考.笹間良彦『日本未確認生物事典』(柏美術出版、1994)、中野美代子『中国の妖怪』(岩波新書、1983)、荒俣宏「因幡の麒麟伝説」『怪』vol.15(角川書店、2003.08)



0 件のコメント:

コメントを投稿