2010年2月19日金曜日

キャスティング (1)

 
キャスティングを妄想する趣味がある。
漫画や小説などを読んで、もしこれが実写映画化されるならどんなキャスティングがいいか、妄想するのである。
最近は意外と映画化が簡単に進むので、自分で妄想するよりも早く映画が発表されたりすることもあるのだが、たいていの場合「違うんだよな~」とか呟いて自分なりに考え直したりする。
ネットをさまよっていると案外同好の士は多いらしく、まぁ考えてみればストーリーは原作だし演出も脚本も考えず役者のプロフィール見ながら並べて遊ぶというのは、いかにもネット住人らしい遊びではある。なかには自分の考えるキャストと全く同じことを想像している人を見つけたりして、なかなか楽しい。

思いついたなかで個人的に気に入っているのは「ルパン三世」で、これは絶対ハットリくんやヤッターマンより実現性が高いと思っていたのだが、やはり再現しようとすると難しいのか、実現の噂は聞かない。
もっとも、実は私が生まれる十年も前に目黒祐樹主演で映画があったそうなのだが、これはまぁ昔のこととして、いまの俳優で是非演じて欲しいのは、

 ルパン三世 : 唐沢寿明
 次元大介 : 伊原剛志
 銭形警部 : 内藤剛志

の3人である。
唐沢さんがシリアスからコメディまで幅広いカメレオン役者であるのは周知のことだが、特にバラエティに出ている時のテンションの高さを見ると、「不二子ちゃ~ん」でトランクス一枚になる名シーンを嬉々として演じていただけるのではないかと思う。
唐沢さんと共演の多い伊原さんは武士も似合うのだが、クラシカルなガンマン役で見たい。内藤さんの厳つい顔はとっつぁんそのものだが、江戸前のイメージがないのがつらい。陣内孝則さんのほうがいいかもしれない。
あと、峰不二子はよく挙げられる藤原紀香か松雪泰子。石川五エ門は時代劇役者で、ベテランなら京本政樹、若手なら山口馬木也などを希望したい。

昨年放送されたNHK「坂の上の雲」なんかも、主役4人(秋山兄弟、正岡兄妹)のキャスティングは完璧だったが、明治の元勲たちはことごとくイメージが違って、かなり違和感があった。たとえば、伊藤博文を加藤剛、山縣有朋を江守徹が演じていたが、江守さんはむしろ遊び人で有名な伊藤公のほうが適任だし、「生涯一軍人」を自称した陰気なオタク気質の山縣公は、柄本明さんとか蟹江敬三さんのような癖の強い役者さんのイメージなのである。(江守さんが薄味だとはとてもいえませんが。)

他にもいろいろ取りそろえているので機会があったらご披露したいが、当ブログの閲覧者にはあまり興味のない話題かと思うので、閑話は休題。



何が言いたかったというと、実は『新撰21』に関する話題である。

どうも一部に多大な誤解を招いたようだが、私の記事をざっと見ていただければ分かるとおり、私は『新撰21』の人選に関して不足や不満がある、とは言ってきたけれど、そうした不満はこの手の企画なら当然のことだから、そのこと自体を批判したことはない。(むしろ擁護的な文章を書いてきたつもりである)
先月、すこしだけ批判的に書いたのは、そうした不足点や不満点といった部分に触れずに、「新撰組」21人の作家論や作品論ばかりが充実していくことに対する批判であった、と思っている。
要するに、『新撰21』に対する批判、ではなく、『新撰21』の取り上げ方に対する批判、であった。

個人的には上のような認識だったので、直接とりあげて異議を唱えさせてもらった中村安伸氏からのコメントは当然として、まるで私が『新撰21』の人選を徹底批判したかのような受け止められ方をされたのは、大変驚いた。

ただ、それもこれも、私自身の『新撰21』に対する不満、を曖昧にしたままだったこと、また、中村氏に提案されたように、それではどのような企画を臨んでいるのかを示すべきだったこと、など、こちらの怠慢があったことも事実である。
そこで、今回はまず第1弾として、『新撰21』に代わるような私案、つまり「妄想キャスティング」をいくつかご披露したいと思う。

そのうちのひとつは、これは堀本吟さんが当ブログのコメント欄でおっしゃっていたことと関わることで、堀本さんは

もし私が死ぬまでに一冊句集を出したならば、それが初めての句集であり、日本の俳句会では(句集とか賞とかがプロの証として見立てられますから)、わたしはその時はじめて新人になるわけです。今回は、新人発見と銘打っていても最初から年齢制限にひかかかって対象外です。(…)若者もおもしろいけれど、老人もなかなか粋に真摯に晩年をたたかっていますよ。俳句誹諧は、化けてゆく文芸です。
というように仰っている。
確かにそれはその通りで、キャリア的に百戦錬磨の堀本さんが「新人」扱いされることはないと思うが、実際のところ現在の俳句人口からすれば、隠れた「新人」の年齢分布は五十代、六十代のほうが圧倒的に多いに違いないのである。今回の『新撰21』がその現状に風穴を開けるアンチテーゼ的な企画だったことは充分意識したうえで、逆に、五十代六十代の「新人」にアンソロジーが続くのも悪くない。

ひとつは(私が心配する必要もない)下世話な購買層の話で、これから俳句を始めようという五十代六十代が興味を持ってくれるのではないか、ということ。俳句の純粋読者を増やしたいという意味でも、購買力のある層をターゲットにすることは重要だと思う。
そしてもうひとつは、単純に私の身の回りでおもしろい俳句を詠むひとが、私より年長であるけれど私と同程度のキャリアの「新人」さんであることが、多いからである。

  花疲れうどんは粉にもどりたい    山本純子『カヌー干す』
  忍法はここに伝わる軒つらら      々
  胴体も頭もポンポンダリアです    水野洋子「MICOAISA」4号
  霰酒あなたは豹になりなさい      々
  海は雨なまこいっぴきいないから   小西雅子『雀食堂』
  そっとそっと目玉が帰る冬の夜     々
  水の姿で人が歩いている晩夏     木村和也「船団」83号
  牡蠣酢食う天文学者になるはずが
      

いずれも「船団」会員で、2000年前後に句作をはじめておられる。
(山本さんは1999年。小西さん2000年。木村さんは中学時代に開始するが長いブランクがあり再開は2003年。水野さんはちょっと手許でわからない)
ちなみに、「新撰組」のキャリアは、著者略歴によれば、矢野玲奈氏が2006年~でもっとも短く、わが後輩の越智と藤田哲史氏の両名が2003年~と並んでいる。
越智という男は、中学一年から文芸部に出入りして句作をしていたので、私とはかなり年が離れているのだが、キャリアでいえば二年も差がない。

まさに彼らこそ「新人」である。

もちろん、「おもしろい俳句」の基準が選者によってかなり左右されるだろうし、「新撰組」以上に分母が多いだろうから、結果的に「人選への批判」は圧倒的に大きくなることはおおいに予想できる。
ただ、私としては、「新撰21スポンサー」さんが仰っているような、「おもしろい句集」への手引きとなりうるようなアンソロジー、という意味で、「中高年新人」のアンソロジーを読んでみたい、という思いがある。



長くなったので、今回はここまで。
 

2 件のコメント:

  1. 新撰21スポンサー2010年2月22日 22:48

    あら。越智さまとお友達でしたか。
    では早晩、私の素性も伝わりましょう。せっかくのご縁ですし、彼には頑張っていただきたいと思っています。できるところから機会を与えたいと思っています。(たぶん怖がっていると思うけれど)。がんばれ~。世間は私よりずっと厳しいからね。

    >花疲れうどんは粉にもどりたい
    >忍法はここに伝わる軒つらら

    面白いですね!
    ちなみにうどんとおかゆ、どちらが消化にいいか知っていますか?答えはうどん。消化管の中で粉に戻りやすい→負担がかかりにくいからです。介護の要重要知識です。あまり知られていませんが。この句とは無関係ですがうどんは粉に戻るのです。

    さて、個人の力でできることはそうたくさんはありません。
    私も俳句界を背負うつもりは毛頭ありません。
    (発言は少し、普通の部外者よりは尊重されているようですが)。今月の句集代。もう30万円超えました(笑)。私だけのためではありません。そういう読者もいるわけです。一億人(by兜太)は嘘だと思いますが。

    船団は購入できるような結社誌がありますか?
    もしお送りくださるのであれば、どうだろ。越智さまにお願いしていただいてもいいのですが(住所知っている、とおもうけれど)、まぁ関さまにお願いしていただいてもいいかもしれません。彼はブログに結社誌の感想を載せていらっしゃいますし。http://kanchu-haiku.typepad.jp/blog/
    いずれは私に送ってくださるので。

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  2. どうも。何度も閲覧いただき恐縮です。

    >越智
    お世話になっているようで恐れ入ります。彼は中高、直接の後輩なので、つきあいとしてはもう随分になります。今でも結構おもしろいですが、これからどうなっていくか見えないという意味ではピカイチだと思います。是非引き続き贔屓にしてやってください。

    >船団
    リンク先のe船団から、バックナンバーの注文ができるかと思います。会員外でも定期購読可能なはずですが、一冊ごとでも購入可能です。船団は他の雑誌に比べて特集に特色がありますので、ご興味があれば是非御覧になってみてください。

    句集は実際、たいていは贈答用で消えてしまうようですね。私も船団に入ってから戴く機会が増えてとてもありがたいのですが、なかなか自分で買う機会は少なくなっているように思います。句集に、なぜバーコードが付いているのか、ということは、とうぶん句集を出す予定のない私にとって興味深い課題ではあります。

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