2020年4月17日金曜日

句集鑑賞(順不同)


『301 ダダダダウッピー』vol.2(象の森書房)は、俳句・短歌を共通言語としてダンサー、画家、生物学者、ミュージシャンなどさまざまなメンバーが集まって活動するワークショップ301がまとめた作品集第2弾。
301の世話人である山本真也は画家であり、「氷室」「船団」で活動する俳句作家でもある。目にとまったいくつかの句・歌を紹介する。
 泉より石のいろいろ見えてきて  鈴木春菜
 それぞれの道へ別れた友達が僕の京都の半分だった  山口凜
 松虫やさよなら清涼飲料水  嵯峨実果子
 うな垂れた分だけ飲めるコカ・コーラ  中村公
 夏院試時間切迫何故勃起  山口優輔
 オカリナを沈める清流夏が行く  植田かつじ
 飯蛸や母の子どもが集う日の  工藤惠
 闖入し餓鬼やはらかに氷柱盗る  石川凍夜
 吾輩は全ての屋根の主である  山本真也
 ここからは地獄の沙汰もすみれ草  宇都宮さとる

workshop 301
301vol.2ダダダダウッピー Amazon 



『エンドロール』(青磁社)は、朝日泥湖の第二句集。
朝日泥湖は1940年生まれ、「船団」句会の長老のひとり。以前は朝日彩湖という俳号で句集『いけず』(青磁社、2007)があるが、句集刊行後改名したので、今のところ別名義で1冊ずつということになる。
 普通の町普通のくらし風光る
 おぼろ月ラップかけずにチンをする
 さくらさくらあんた何人殺めたの
 また負けた風船飛ばしてあげたのに
 話したいんだ、六月の大きな樹
 サバンナの風は遺伝子赤い風
 表札は父娘別姓秋日和
 外はぱりっと中はふわっと冬日和
 秋の海おおきなものが消えてゆく
 散在もええねん老朽船の春



『乙女ひととせ』vol.08は、同志社女子大学表象文化学部創作講義の作品集。今年から講義名が「クリエイティブライティング」に変更されたそうだ。講師は塩見恵介氏。受講生による作品のほか、「平成の名句鑑賞」「私が選ぶ!平成イチオシ句集」などのページもあり、令和のはじめに平成を振りかえった企画がならぶ。
ほとんどがはじめて俳句の実作をおこなう女子大学生であるが、現代の女子大学生に交じりながら時に発想を飛ばし、時にベタな笑いをひきおこす塩見氏の舵取りで、創作や鑑賞を楽しんでいる様子がよくわかる。
 プールでは戦争にてのひらの銃  趙蘭
 ごめんねは苺ミルクで総精算  西山萌花
 お人好し鎖骨で金魚を飼う季節  松本志穂

 クリスマスゼミの教授がサンタさん  加藤雅
 秋の夜ちょっと火星へお買い物  松宮静香
 コスモスをいつか見下ろす日が来たら  辻田真波
 たんぽぽを咲かせて天と地の和解  塩見恵介


0 件のコメント:

コメントを投稿