2016年8月19日金曜日

Kuru-Cole 2 野住朋可


Kuru-Coleとは?


「おおざっぱ」

野住朋可(のずみ・ともか)

 一九九二年愛媛県生まれ。関西俳句会「ふらここ」会員。

春休みだから飛行機見にきたの
うららかに三十品目のサラダ
尻乗ればどこでも椅子となる梅見
うぐいすのふるわせている四畳半
しじみ汁京都に長い長い晩
初夏のギタリストの口の半開き
緑陰の隙間の光ばかり踏む
冷麦をすする早さで過ぎる夏
水槽の中はつまらん晩夏過ぐ
雷の一筋地球脱皮する
小魚のひとつ逃げ遅れて九月
また父に言えぬことあり酔芙蓉
星月夜煙突掃除夫の不在
ハーモニカ吹いて勤労感謝の日
ポスターに女ホームに冬の蝶
大根の煮物の朝のカーディガン
数え日の塔にょんにょんと光るなり
のど飴に枯野の風をひとすくい
鼻歌は音痴でバレンタインデー
湯豆腐の豆腐以外のおおざっぱ




編者コメント

野住さんは、最近私がもっとも信頼している年少の句友である。
愛媛県に生まれた彼女は、高校時代に俳句を始めていて、俳句甲子園も予選大会には参加したらしいが、本選には進めなかった。大学で関西に来て、2013年ごろから柿衞文庫の俳句ラボに参加してくれるようになって、知り合った。だから本格的な俳句スタートは俳句ラボから、という。
現在彼女は大学を卒業し、大阪で会社員をしながら俳句活動を少しずつ広げている。関西俳句会「ふらここ」や、小池康生さんの主催する枚岡句会では学生たちより熱心に参加し、一月の休日をほとんど俳句に費やしているのではないかという勢いだ。
とにかく熱心で、そのくせ学生たちに対して「老害です」と満面の笑みで名乗るような茶目っ気もある。24歳の彼女に「老害」を名乗られると私もどうしていいかわからないが、そういう、軽やかにふてぶてしいのが彼女の魅力であろう。
彼女は、関西の一部の若手が知っているだけの、無名の存在である。だからいまはゼロ地点といえるが、無理なく生活のなかに俳句を取り込んでいるのが強みである。これからどんどん注目される作家になると思う。

そんな彼女についての小論を、私が信頼する畏友のひとり、西村麒麟さんにお願いした。野住さん自身も麒麟さんの文章のファンであるという。二人には面識がないが、二人のコラボを一番喜んでいるのは、実は編者の私自身でもある。

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